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TRIPS協定とは? |
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TRIPS協定は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)の略称で、WTO協定付属書1Cとして規定されています。 WTO協定成立前は、工業所有権に関するパリ条約や、著作権に関するベルヌ条約などが、知的所有権の国際的保護について規定していました。しかし、これらの条約による保護を不十分とする米国などの圧力により、WTO協定の1つとして、貿易に関連する知的財産権に関する国際保護に関する協定が採択されました。「貿易関連」とは言うものの、TRIPS協定には、知的財産権に関するかなり多くの問題についての規定が盛りこまれています。 TRIPS協定成立後、従来のパリ条約、ベルヌ条約は、どのように扱われるのでしょうか。また、TRIPS協定は、従来の条約と比べて、どのような違いがあるのでしょうか。 |
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TRIPS協定は、パリ条約やベルヌ条約などに基づく既存の義務を、遵守することを求めています(第2条。ただし、ベルヌ条約に規定されている著作人格権は除く)。これは、パリ条約やベルヌ条約などの加盟国であるか否かに関わらず、すべてのWTO加盟国に適用されます。つまり、パリ条約やベルヌ条約の加盟国でない国であっても、TRIPS協定により、これら既存の条約の義務を遵守しなくてはなりません。 |
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最も大きな違いは、TRIPS協定が、最恵国待遇(第4条)を基本原則の一つとしていることです。TRIPS協定は、「加盟国が他の国の国民に与える利益、特典、特権又は免除は、他のすべての加盟国の国民に対し即時かつ無条件に与えられる。」と規定しています。 また、TRIPS協定における知的財産権の保護基準は、既存の国際条約よりも高いものとなっています。TRIPS協定は、知的財産権保護のミニマム・スタンダードを定めた、といわれることがあります。すなわち、WTO加盟国は、TRIPS協定に規定された最低限の保護基準を、国内法により実施しなくてはなりません。同時に、加盟国の裁量により、TRIPS協定の基準より高い保護を与えることもできます。 TRIPS協定は、協定の履行確保に関するメカニズムが組み込まれています。TRIPS協定以前にも、WIPO(世界知的所有権機関、World Intellectual Property Organization)が知的財産権の国際的保護に関して一定の役割を果たしていましたが、TRIPS協定は、国内的救済や加盟国間の紛争処理手続などに関し、より広範かつ詳細な規定を設けています。 それでは、TRIPS協定の主要な規定を概観してみましょう |
★基本原則 先に、TRIPS協定は最恵国待遇を基本原則の一つとしている、と述べましたが、もう一つの重要な原則が、内国民待遇です(第3条)。TRIPS協定は、「自国民に与える待遇よりも不利でない待遇を他の加盟国の国民に与え」なくてはならない、と規定しています。 しかし、TRIPS協定の内国民待遇原則には、既存の条約で認められていた例外が引き続き認められているほか、最恵国待遇原則についても、いくつかの例外が認められています。 全文及び第7条には、TRIPS協定の目的として、「技術革新の促進」、「技術の移転及び普及」、「技術的知見の創作者及び使用者の相互の利益」、「社会的及び経済的福祉の向上」、「権利と義務との間の均衡」があげられています。また、第8条は、「原則」として、加盟国が「公衆の健康」などの「公共の利益を促進する」措置を採ることを認めています。 |
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第14条は、実演家、レコード(録音物)製作者及び放送機関のいわゆる著作隣接権の保護について規定していますが、この条項は、祖父条項(協定発効時に既に存在する国内法を、一定の条件の下、協定の義務から免除する条項)により一部その効果が制限されています。 |
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商標権の保護対象(第15条)、商標権者の排他的権利(第16条)、保護期間(第18条)などについて、規定しています。 |
★実体的権利3-地理的表示 地理的表示に関しては、シャンペン、アイダホ・ポテトなどのように、原産地の表示が品質や社会的評価などに関して何らかの示唆を与える場合に、原産地を誤認させるような表示をすることを防止する規定がおかれています(第22条)。地理的表示の通報及び登録に関する多国間の制度を設けるか否かについて、TRIPS理事会において議論が続けられていますが(第23.2条)、より厚い保護を求めるEUなどと、新たな義務を規定することに消極的な米国や日本との間で、意見が対立しています。 |
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意匠権の、保護の要件(第25条)や意匠権者の権利(第26条)などについて、規定しています。 |
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新規性、進歩性、産業上の利用可能性を要件として認められる特許権は、公序良俗の維持を目的とした除外、診断方法、治療方法及び外科的方法の除外、ある種の動植物やその生物学的生産の除外、が、認められています(第27条)。加盟国は、特許権者に与えられる排他的権利(第28条)について、第三者の正当な利益を考慮した限定的な例外を定めることができます(第30条)。保護期間は、特許出願から20年以上でなくてはなりません(第33条)。また、強制実施権が認められる要件や、強制実施権の行使に関する条件は、開発途上国に配慮した、比較的緩やかなものとなっています。 |
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集積回路の回路配置に関しては、IPIC条約(集積回路についての知的所有権に関する条約、Treaty on Intellectual Property in Respect of Integrated Circuits)関連規定の遵守を規定している(第35条)ほか、保護の範囲(第36条)や期間(第38条)などが規定されています。 |
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知的財産権の侵害行為に対し、効果的かつ迅速で、将来の侵害を抑制する措置を採らなければならない、と規定する一方で、そのような措置が、正当な貿易の障害や、濫用に対するセーフガードとなってはなら ない、としています。 |
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民事・行政上の、適正手続(第42条)や、証拠法(第4条)についても、詳細に規定されています。また、司法当局が、差止命令(第44条)、損害賠償(第45条)、侵害品の流通経路からの排除又は廃棄(第46条)、侵害品の流通経路に関する情報の開示(第47条)、などの救済措置をとる権限を有していなくてはならない、と規定されています。他方、濫用に対するセーフガード条項が、挿入されています(第48条)。 |
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知的財産権侵害又は侵害品の流通経路流入の防止のため、また、侵害に関する証拠を保全するため、司法当局は、職権により暫定措置を採る権限を有していなくてはならない、とされています(第50条)。他方、濫用に対するセーフガード条項が、挿入されています(第50条3項)。 |
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不正商標商品及び著作権侵害品に対し、行政的若しくは民事的性質を有する適当な機関が、申立若しくは職権により、国境においてその輸入を差し止めうるような手続を定めなくてはならない、と規定しています(第51条)。手続や救済措置に関する詳細な規定も、おかれています(第52〜60条)。 |
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商業的規模の商標の不正使用及び著作物の違法複製に対しては、刑事手続が用意されていなくてはなりません(第61条)。 |
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先に、TRIPS協定は、履行確保のメカニズムを備えている、と述べましたが、そのメカニズムの中心にあるのが通報制度です。加盟国は、協定に関連する国内法令を、TRIPS理事会に通報しなくてはなりません(第63.2条)。通報された国内法令は、TRIPS理事会による審査の対象となります。現在は、先進国の法令が審査の対象となっています。 このほかにも、内国民待遇(第1.3、3.1条)や最恵国待遇(第4条(d))についてTRIPS協定以外の国際協定を適用する場合、また、不正商標商品及び著作権侵害品の貿易に関し(第69条)、TRIPS理事会に通報することが求められています。 |
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先進国は、1996年1月1日までにTRIPS協定のすべての協定を、また、開発途上国は、同日までに内国民待遇及び最恵国待遇条項を、実施することが求められています。 発展途上国、及び、一定の条件を満たす移行経済国は、その他の義務に関しては、2000年1月1日までに実施しなくてはならない、と規定されています。また、後発開発途上国に対しては、協定発効から11年間、すなわち2006年1月1日までの経過期間が設けられています。 ただし、医薬品及び農業用化学品については、経過期間中であっても、特許出願を受理し、かつ、期間終了後に審査を行う際は、経過期間中の出願日を基点として審査を行わなくてはならない、とされています(メール・ボックス・ルールと言われる。第70.8条)。 |
★紛争解決 TRIPS協定に関する国際紛争は、他のWTO協定関連の紛争と同様、GATT及びWTO紛争解決了解に基づく紛争処理手続に付されます(第64条)。WTO紛争処理手続は、他の国際裁判手続に比べ、頻繁に利用され、かつ、司法化が進んでいることから、紛争処理を通じたTRIPS協定の履行確保や規定意味の明確化などが期待されます。 |
★TRIPSに関連するWTO紛争処理案件(2000年12月13日現在)
| No. | 案件 | 被申立国 | 申立国 | TRIPS関連規定(項目数をクリックすると、各項の題目が表示されます) | その他の関連規定 | 備考 | ||||||||||||||||||||||||
| 1部 | 2部 | 3部 | 4部 | 5部 | 6部 | 7部 | ||||||||||||||||||||||||
| 1節 | 2節 | 3節 | 5節 | 7節 | 1節 | 2節 | 3節 | 4節 | 5節 | |||||||||||||||||||||
| 2条 | 3条 | 4条 | 9条 | 14条 | 15条 | 16条 | 21条 | 24条 | 27条 | 28条 | 31条 | 33条 | 34条 | 39条 | 41条 | 42条 | 49条 | 50条 | 51条 | 61条 | 62条 | 63条 | 65条 | 70条 | ||||||
| 199 | 特許保護関連措置 | ブラジル | 米国 | ● | ● | GATT§3 | 協議 | |||||||||||||||||||||||
| 196 | 医薬品特許保護と農業化学品試験数値保護 | アルゼンチン | 米国 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | 協議 | |||||||||||||||||
| 186 | 1930年関税法337条及びその改正 | 米国 | EC | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | GATT§3 | 協議 | ||||||||||||||||
| 176 | 乗合予算法211条 | 米国 | EC | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | パネル | ||||||||||||||||||
| 174 | 農業品・食品の商標権保護と地理的表示 | EC | 米国 | ● | ● | ● | ● | ● | 協議 | |||||||||||||||||||||
| 171 | 医薬品特許保護と農業化学品試験数値保護 | アルゼンチン | 米国 | ● | ● | ● | 協議 | |||||||||||||||||||||||
| 170 | 特許保護期間 | カナダ | 米国 | ● | ● | ● | 上級委員会 | |||||||||||||||||||||||
| 160 | 著作権法110条(5) | 米国 | EC | ● | パネル報告 | |||||||||||||||||||||||||
| 153 | 医薬品・農業特許保護 | EC | カナダ | ● | 協議 | |||||||||||||||||||||||||
| 125 | 動画・テレビ番組関連知的財産権実施 | ギリシャ | 米国 | ● | ● | 協議 | ||||||||||||||||||||||||
| 124 | 動画・テレビ番組関連知的財産権実施 | EC | 米国 | ● | ● | 協議 | ||||||||||||||||||||||||
| 115 | 著作権・著作隣接権関連措置 | EC | 米国 | ● | ● | ● | ● | ● | ※TRIPS協定2部1節すべてを対象 | 114と併合 | ||||||||||||||||||||
| 114 | 医薬品特許保護 | カナダ | EC | ● | ● | ● | パネル報告 | |||||||||||||||||||||||
| 83 | 知的財産権関連措置 | デンマーク | 米国 | ● | ● | ● | 協議 | |||||||||||||||||||||||
| 82 | 著作権・著作隣接権関連措置 | アイルランド | 米国 | ● | ● | ● | ● | ● | ※TRIPS協定2部1節すべてを対象 | 協議 | ||||||||||||||||||||
| 79 | 医薬品農業用化学品特許 | インド | EC | ● | パネル報告 | |||||||||||||||||||||||||
| 50 | 医薬品農業用化学品特許 | インド | 米国 | ● | ● | ● | 上級委員会報告 | |||||||||||||||||||||||
| 42 | 録音関連措置 | 日本 | EC | ● | ● | 協議 | ||||||||||||||||||||||||
| 37 | 工業所有権法下の特許保護 | ポルトガル | 米国 | ● | ● | ● | 協議 | |||||||||||||||||||||||
| 36 | 医薬品農業用化学品特許保護 | パキスタン | 米国 | ● | ● | ● | 協議 | |||||||||||||||||||||||
| 28 | 録音関連措置 | 日本 | 米国 | ● | 協議 | |||||||||||||||||||||||||
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