WT/DS139/AB/R, WT/DS142/AB/R

31 May 2000

Canada – Certain Measures Affecting the Automotive Industry

    Complaint by Japan, Complaint by the European Communities

Report of the Appellate Body

 

<目次>

案件

申立国

被申立国

関連協定

第三国参加

経緯

事実関係

上級委員会決定の分析

1.最恵国待遇原則

2.補助金協定(輸出補助金及び国産品優先使用補助金の禁止)

3.GATS(最恵国待遇原則、内国民待遇原則)

上級委員会の結論

 

*案件

自動車関連措置

 

*申立国

日本

EC

 

*被申立国

カナダ

 

*関連協定

GATT1.1

補助金協定3.1

GATS1.12.1

 

*第三国参加

韓国、米国

 

*経緯

1998年 7月 3日  日本による協議要請

1998年 8月17日 ECによる協議要請

1998年11月12日  日本によるパネル設置要請

1999年 1月14日 ECによるパネル設置要請

1999年 2月 1日  パネル設置

2000年  2月11日  パネル報告

2000年 5月31日 上級委員会報告

 

*事実関係

(パネル・レポートを参照してください。)

 

*上級委員会決定の分析

1.最恵国待遇原則

 カナダは、パネルの結論は、GATT1.1条が事実上の差別(de facto discrimination)を禁止していることを前提としつつ、事実関係の審査のみに基づ導かれたもので、法的根拠を欠いている、と上訴した。

 上級委員会は、GATT1.1条が事実上の差別を禁止していることは、これまでのGATTにおけるパネル報告からも明らかであり、また、GATT1.1条の文脈(context)や目的(object and purpose)に照らしても、パネルの結論(カナダの関税免除措置はGATT1.1条に違反する)は妥当なものである、とした。

 

2.補助金協定(輸出補助金及び国産品優先使用補助金の禁止)

比率要件に基づく関税免除措置は、禁止されている輸出補助金にあたるか

() 関税免除措置は、補助金協定1条に定義される補助金にあたるか

 カナダは、@補助金協定1.1(a)条の注によると、関税免除措置は通常の非課税措置(tax exemption)とは異なり、免除額が通常の関税額を超えて初めて補助金協定1条に規定される「補助金」となりうる、AMVTO1998などの措置がなくとも、NAFTAの下で関税免除措置は与えられていた、などとして、カナダの措置は補助金協定1条に規定される「補助金」にはあたらない、と主張していた。

 上級委員会は、United States-FSC(Foreign Sales Corporations)における上級委員会報告を引用しつつ、ある措置の下での政府収入と、当該措置がなかった場合(ただし、これは具体的数値で示すことが出来るなど、確定的・規範的なベンチマーク(defined, normative benchmark)でなくてはならない)の政府収入とを比較し(comparison between the revenues due under the contested measure and revenues that would be due in some other situation)、前者が少なかった場合に当該措置が補助金協定1.1(a)(ii)条の「政府がその収入となるべきものを放棄(government revenue that is otherwise due is forgone)」したものとされる、とした。その上で、本件においては6.1%という通常の関税を課している状態が確定的・規範的なベンチマークとなり、このベンチマークに照らすとカナダの措置は「収入となるべきものを放棄した」とみなされる、と認定した。

 なお、カナダの@、Aの主張については、いずれも本件には関係ないとして退けている。

 

() 関税免除措置は、輸出が行われることを条件としているか

 カナダは、パネルは、事実関係の「仮定的」分析(“hypothetical” analysis of certain factual elements)を行いながら、 輸出が行われることが関税免除措置を得る「法的」条件であったと認定したと主張していた。

 上級委員会は、Canada-Aircraftでの上級委員会報告を引用しつつ、「法的」条件とされるためには、必ずしも法律の文言(the words of the relevant legislation, regulation or other legal instruments)上「条件」とされていなくともよく、黙示的であっても明確であれば良い(clearly, though implicitly)、とし、MVTO1998やSROsの規定は関税免除措置と輸出との間に明確な依存関係(clear relationship of dependency or conditionality exists between the granting of the import duty exemption and the exportation of motor vehicles by manufacturer beneficiaries)があり、パネルの決定は支持される、とした。

 なお、ECは、パネルがCVA要件に基づく関税免除措置が輸出補助金にあたるか否かを検討しなかったことに対し、上訴していたが、上級委員会は、United States-Measures Affecting Imports of Woven Wool Shirts and Blouses from IndiaAustralia-Measures Affecting the Importation of Salmonを引用し、パネルはすべての法的主張を検討する必要はなく、CVA要件は他のWTO協定に違反していると認定されていることから、CVA要件の補助金協定3.1(a)条に関するECの補足的主張(alternative claim)を検討する必要はなかった、とした。ただし、上級委員会は、ある主張を検討しない場合は、訴訟経済(judicial economy)の観点から検討しない旨を報告の中に明記すべきである、とも述べている。

 

関税免除措置は、禁止されている国産品優先使用補助金にあたるか

 パネルは、補助金協定3.1(b)条で禁止されている国産品優先使用補助金は、国産品の使用が補助金を得るための直接的な条件(conditional, dependent)となっているものである、として、カナダの措置はこれにあたらないとした。この決定に対し、ECは、補助金の3.1条(b)は輸入品よりも国産品を優遇する(“gives preference to” the use of domestic over imported goods)ことを条件とする補助金を禁止していると反論し、日本は、同条は輸入品よりも国産品を使用することが補助金付与につながりうる措置(subsidies where the use of domestic over imported goods “would lead to” the granting or maintaining of the subsidy)を禁止していると反論した。

 上級委員会は、Canada-Aircraftの上級委員会報告を引用しつつ、@補助金協定3.1(b)条の「に基づいて(contingent)交付される」とは、3.1(a)条と同様、ある条件が「満たされている場合に限って交付される(“dependent for its existence on”)」と解すべきであり、かつ、このような法的条件(contingency “in law”)があることが法令等の文言から必然的に推論(necessary implication from the words actually used in the measure)されれば十分である、Aカナダの措置が補助金協定3.1(b)条違反であるか否かは、国産品を使用しなければ補助金は交付されないのか否かに依存する、B国産品を使用しなくても、CVA要件を達成して補助金交付を得ることが出来るかは、CVAの実際の数値によって異なる(whether or not a particular manufacturer is able to satisfy its specific CVA requirements without using any Canadian parts and materials in its production depends very much on the level of the applicable CVA requirements)、C個々の企業によって異なるCVAの数値を審査しないまま、カナダの措置は補助金協定3.1(b)条に違反しない、としたパネルの判断は誤りであった、D個々の企業に課された正確なCVAの数値が不明なので、カナダの措置が補助金協定3.1(b)条で禁止される国産品使用を法的条件とするものであったかについては、判断を留保する、とした。

 上記に加え、日本とECは、パネルの、補助金協定3.1(b)条が国産品使用を「法的」条件とする補助金のみを禁止し、「事実上」の条件とする補助金を禁止したものではない、との決定について、上訴していた。上級委員会は、@補助金協定3.1条(a)が「法令上又は事実上(in law or in fact)」の条件を対象とすることを明記(explicit language)し、3.1(b)条にはそのような文言がないこと(パネルの結論の根拠とされた)のみで、3.1(b)条が「事実上」の条件を対象としていないと結論することは妥当ではない、A3.1(b)条の通常の意味(ordinary meaning)のみでは、「事実上」の条件が排除されているとは言い切れない、B3.1条と類似の規定であるGATT3.4条は、法令上及び事実上の措置の両方を対象としている(covers both de jure and de facto inconsistency)EC-Bananasを引用しつつ、C3.1(a)条にある「法令上又は事実上」という文言が、3.1(b)条にないからといって、3.1(b)条が「法令上」の条件のみを対象としている、ということは出来ない、D3.1(b)条が「事実上」の条件に適用されなければ、加盟国は容易に3.1(b)条の義務を回避することができてしまい、このような解釈は補助金協定の目的に反する(contrary to the object and purpose)、とし、3.1(b)条が「法令上」の条件のみを対象としている、というパネルの決定を覆した。しかし、上級委員会は、カナダの措置が国産品使用を「事実上の」条件とする措置か否かについては、十分な事実関係が証明されていないとして、これについての判断は留保した。

 

3.GATS(最恵国待遇原則、内国民待遇原則)

 上級委員会は、まず、カナダの措置がGATSの対象となるか否かはGATS2条などの実体的争点と併せて検討すべき問題であるとしたパネルの決定について、United States-Import Prohibition of Certain Shrimp and Shrimp Products上級委員会報告を引用しつつ、GATS1.1条の構成と論理、かつ、その他の規定との関連に鑑みると、ある措置がGATSの対象となるか否かは、GATSの実体的義務との整合性を論じる前に、検討すべきである(the fundamental structure and logic of the rest of the GATS, require that determination of whether a measure is, in fact, covered by the GATS must be made before the consistency of that measure with any substantive obligation of the GATS can be addressed)、とした(強調は原文通り)。

 次に、上級委員会は、ある措置がGATSの対象となる「サービスの貿易に影響を及ぼす措置(measures affecting trade in services)」か否かは、@GATS1.2条に規定される「サービスの貿易(trade in services)」があるか、A当該措置が、@のサービスの貿易に「影響を及ぼす(affect)」か、の2つの法的問題に答える必要があるとした。そして、@については、カナダで提供される自動車の卸売りサービス(wholesale trade services of motor vehicles supplied by services of certain Member through commercial presence in Canada)が問題となっており、そのようなサービスが実際に展開されていることについては当事国間に争いはない、Aについては、ECC-Bananasの上級委員会決定(ある産品の生産や輸入などを行っている企業であっても、「卸売りサービス」にも従事し、「卸売りサービス」を提供するにあたって他国の措置の影響を受けている場合(to the extent that it is also engaged in providing ‘wholesale trade services’ and is therefore affected in that capacity by a particular measure by a Member in its supply of those ‘wholesale trade services’)は、GATTとGATSの双方の対象となりうる(could be found to fall within the scope of both the GATT 1994 and the GATS)、とした。)を引用しながらも、本件パネルは、カナダにおいて誰がどのように自動車卸売りサービスを提供し、かつ、そのサービスがカナダの措置によって影響を受けたか否かにつき、十分な法的根拠を挙げていない(the Panel should then have examined all the relevant facts, including who supplies wholesale trade services of motor vehicles through commercial presence in Canada, and how such services are supplied)、として、カナダの措置がGATSの対象となる、としたパネルの決定を破棄した(強調は原文通り)。

 上級委員会は、上記のとおり、カナダの措置がGATSの対象となる、としたパネルの決定を棄却しながらも、カナダの措置がGATS2.1条に違反するというパネル決定について、審査を行っている。

 上級委員会は、GATS2.1条に関する問題は、@問題となっている措置が、GATSの対象となるサービスの4形態のいずれかに相当するかを決定、A「同種の(like)」サービスやサービス提供者の有無を決定、BGATS2.1条の解釈、Cカナダにおける卸売りサービスに関する事実認定、D認定された事実関係へのGATS2.1条解釈の適用、の順に審査すべきであり、一定の卸売りサービス提供者に不利な競争条件を与える可能性(“possibility”)のあるカナダの措置はGATS2.1条違反であるとしたパネルの決定を、「推論(speculation)」に過ぎない、として退けた。

 さらに上級委員会は、@「メーカー/卸売業者(manufacturer/wholesalers)」というパネル報告の文言に見られるように、パネルは、メーカーへ関税免除措置が与えられているという問題と、関税免除措置が卸売業者に影響を与えるかもしれないという問題とを混同している(the Panel is confusing the application of the import duty exemption to manufacturers with its possible effect on wholesalers)(強調は原文通り)、Aパネルは、メーカーへの関税免除措置が、自動車の卸売りサービスの提供や卸売りサービス提供者にどのような影響を与えているかの審査を行っていない(the Panel failed to demonstrate how the import duty exemption granted to certain manufacturers, but not to other manufacturers, affects the supply of wholesale trade services and the suppliers of wholesale trade services of motor vehicles)(強調は原文通り)、として、カナダの措置がGATS2.1条に違反する事実上の差別だとしたパネルの決定を破棄した。

 

※上級委員会報告分析者のコメント

 GATSに関する上級委員会の決定は、一方では(後半部分)、メーカーへの措置とサービス提供者への影響との因果関係を明確にすることを求めたものであり、この点は評価できる。しかし、他方で(前半部分)、上級委員会の決定は、「潜在的競争(potential competition)」を制限する可能性のある措置を、アプリオリにGATSの外へ追いやるものであったのではないか、という疑問も感じる。この問題は、GATSの保護法益が何であるのか、という根本的な問と直結している。GATSが禁止しているのは、実際の競争を制限することなのか、それとも、潜在的な競争の可能性を封じることなのか・・・。さらに、今後WTOが貿易と競争の問題に本格的に取り組むようになれば、GATSの規定と競争に関する規定との整合性も求められることになり、WTOが保護する「競争」とは何か、回答を迫られることになろう。

 

*上級委員会の結論

(a) カナダの関税免除措置が1994年のGATT1.1条に違反するとしたパネルの決定を支持する。

(b) カナダの比率要件に基づく関税免除措置が補助金協定3.1(a)条に違反するとしたパネルの決定を支持する。

(c) パネルがカナダのCVA要件に基づく関税免除措置が補助金協定3.1(a)条に違反するかを審査しなかったのは、適格な訴訟経済の一環であったと認定する。

(d) カナダのCVA要件に基づく関税免除措置が補助金協定3.1(b)条に違反するか否かの判断を留保し、また、補助金協定3.1(b)条が「事実上の」条件に適用されないとしたパネルの決定を破棄するが、事実関係に関する証拠が不十分であるため、カナダの措置が補助金協定3.1(b)条に違反するか否かの判断を留保する。

(e) カナダの措置がGATS1.1条に規定される「サービスの貿易に影響を与える」措置であるか否かを検討しなかったのは誤りであると認定し、また、カナダの関税免除措置がGATS2.1条に違反するとしたパネルの結論及び根拠を破棄する。

 

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