WT/DS268/RW

30 November 2006

United States – Sunset Reviews of Anti-Dumping Measures on Oil Country Tubular Goods

   Recourse to Article 21.5 of the DSU by Argentina

Report of the Panel

 

<目次>

案件

申立国

被申立国

主たる関連協定

パネリスト

参加第三国

経緯

事実関係

パネル決定の分析

1.      一般的問題

2.      米国ウェイバー規定のアンチダンピング協定11.3条適合性

3.      ウルグアイ・ラウンド実施法129条決定の根拠となった事実関係

4.      ダンピングの存続又は再発の可能性に関する米国商務省決定

5.      アンチダンピング協定6条違反の申立

パネルの結論及び勧告

救済

 

poki_b01案件

油井管ADサンセット・レビュー

 

poki_b01申立国

アルゼンチン

 

poki_b01被申立国

米国

 

poki_b01主たる関連協定

アンチダンピング協定(千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定; Agreement on Implementation of Article VI of the General Agreement on Tariffs and Trade 1994)、DSU(紛争解決に係る規則及び手続に関する了解; Understanding on Rules and Procedures Governing the Settlement of Disputes

 

poki_b01パネリスト

Mr. Paul O'Connor (Chairperson)

Mr. Bruce Cullen

Dr. Faizullah Khilji

 

poki_b01参加第三国

中国、EC、日本、韓国、メキシコ

 

poki_b01経緯

2004年12月17日 パネル・上級委員会報告(オリジナル)採択

2006年 1月26日 21.5条手続要請

2006年 3月17日 パネル付託

2006年11月30日 パネル報告

2007年 4月12日 上級委員会報告

2007年 5月11日 パネル・上級委員会報告採択

※上級委員会報告については、上級委員会決定の分析をご参考ください。

 

poki_a01事実関係

 米国は、オリジナルのDSB(紛争解決機関)報告の勧告に基づき、商務省規則を改正したが、関税法の規定は改正しなかった。また、適用事例については、米国ウルグアイ・ラウンド実施法129条に基づく見直し手続きを行った。

 

 

poki_a01パネル決定の分析

1.一般的問題(General Issues)

パネルは、審査基準及び立証責任に関する原則を確認した(7.1-4)

 

2.米国ウェイバー規定のアンチダンピング協定11.3条適合性に関するDSBの勧告及び裁定の実施(Implementation of DSB Recommendations and Rulings Regarding the Inconsistency of US Waiver Provisions with Article 11.3 of the Agreement)

パネルは、次のように述べて、(米国関税法751条(c)(4)(A)及び米国商務省規則351.218条(d)(2)と共に運用される)米国関税法751条(c)(4)(B)が依然としてアンチダンピング協定11.3条に違反していると認めた。@オリジナルのパネル・上級委員会報告は、明示的ウェイバー(“explicit” or “affirmative” waiver)又は黙示的ウェイバー(implicit or deemed waiver)により商務省のサンセット・レビューに参加する権利を放棄した輸出企業については、アンチダンピング措置が撤廃された場合にダンピングを継続又は再開するものとみなすと規定している米国関税法及び商務省規則関連規定をアンチダンピング協定11.3条違反と認定していた。この認定をうけて米国は、商務省規則351.218条(d)(2)(iii)を撤廃するとともに、同規則351.218条(d)(2)(ii)を改正した。この修正により、黙示的ウェイバーは撤廃され、明示的ウェイバーについては、サンセット・レビューに参加する権利を放棄する輸出企業に対し、措置が撤廃された場合にダンピングを継続又は再開するとの確認書面の提出を求めることとなった(7.15-20)、A両当事国は、米国関税法751条(c)(4)(A)の「参加しないことを選択する(electing not to participate)」企業という文言が、サンセット・レビューに参加する権利を明示的に放棄する企業のみを指すのか、あるいは明示的な意思を示していない企業をも含むのかについて争っている*。したがってパネルは米国関税法751条(c)(4)(A)の当該文言の意味を明らかにしなければならないが、パネルの任務は米国国内法そのものを解釈することではなく米国がWTO協定上の義務を遵守しているか否かを審査することに限られることに留意する。米国関税法751条(c)(4)(A)のタイトルや構造、SAA(Statement of Administrative Action)から、米国関税法751条(c)(4)(A)の参加しないことを選択するとの文言の意味は、サンセット・レビューに参加する権利を放棄すると同じ意味であり、現行の商務省規則351.281条(d)(2)(ii)によればサンセット・レビューに参加する権利を放棄するためにはその旨の明示的な意思を示す必要がある。すなわち米国関税法751条(c)(4)(A)は現段階では明示的ウェイバーのみを対象としていると解すべきである(7.21-31)、B調査当局は、アンチダンピング協定11.3条のサンセット・レビューが調査、審判としての性格を有するものであることに配慮しつつ、過去のデータに基づきながら将来に向けた決定を行わなければならない(should have regard to both “investigatory and adjudicatory aspects” of sunset reviews and make forward-looking determinations on the basis of evidence relating to the past)。また調査当局は、実証的な証拠に基づき理由のある決定を行うべく(must arrive at reasoned conclusions on the basis of positive evidence)積極的に努めなければならない。この点パネルは、米国商務省がアンチダンピング措置命令全体について(order-wide basis)(つまり措置の対象企業すべてに対してまとめて)サンセット・レビューの決定を行っていることに留意する。このような方法のもとでは、個々の企業の明示的ウェイバーが対象企業すべてのダンピングの存続又は再発の決定の基礎とされることになり、これが実証的な証拠に基づく理由のある決定とみなしうる場合もあれば、そうでない場合も生じうる(措置の対象企業の中に明示的ウェイバーを行うものと何の意思も示さないものがあった場合、前者の明示的ウェイバーに基づき後者に対しても措置が継続される場合など)。米国は、個々の企業ごとの明示的ウェイバーに基づく決定が措置命令全体についての決定(対象企業すべてについての決定)を左右するわけではない(company-specific findings would not necessarily determine the outcome of the order-wide determination)と主張しているが、米国は措置命令全体についての決定(対象企業すべてについての決定)が個々の企業の明示的ウェイバーに基づく決定から独立していることを示す米国法の規定を示していない(the United States has not directed our attention to any provision of US law which would support its proposition that the USDOC’s order-wide determinations are independent from the company-specific determinations made under Section 751(c)(4)(B) of the Tariff Act)。むしろパネルは、個々の企業の明示的ウェイバーに基づく決定が措置命令全体についての決定(対象企業すべてについての決定)に対して重大な結果を及ぼし場合によっては結果を左右しており (necessarily have a significant impact on, or even determine, the outcome of the USDOC’s order-wide determination)し、これにより明示的ウェイバーを行わなかった企業の提出した情報を商務省が十分考慮しない恐れがあると考える。したがって、(米国関税法751条(c)(4)(A)及び米国商務省規則351.218条(d)(2)と共に運用される)米国関税法751条(c)(4)(B)は商務省がダンピングの存続又は再発の可能性について理由のある結論を行うことを妨げておりアンチダンピング協定11.3条に違反している(7.32-41)

*分析者注:前者は米国の、後者はアルゼンチンの主張。仮にアルゼンチンの主張が正しければ、商務省規則の関連規定が撤廃されたにもかかわらず、関税法751条(c)(4)(A)により依然として黙示的ウェイバーが適用されることとなる。詳しくは、米国関税法751条(c)(4)本文を参照のこと。

 

3.ウルグアイ・ラウンド実施法129条に基づく米国商務省決定の根拠となった事実関係(Factual Basis of the USDOC’s Section 129 Determination)

米国商務省は、DSB勧告を実施するため、ウルグアイ・ラウンド実施法129条に基づきダンピングの存続又は再発の可能性について改めて決定を行った際、新たに提出された情報(オリジナルのサンセット・レビュー期間に関連する情報)を考慮した。

これに対してアルゼンチンは、DSB勧告を実施するために新たな情報を考慮することは認められないと主張した。

パネルは、次のように述べてアルゼンチンの主張を退けた。@アンチダンピング協定11.3条は、ダンピングの存続又は再発の可能性が認められなければ5年以内にアンチダンピング措置を撤廃しなければならないと規定しているが、この規定は調査当局がDSBの勧告及び裁定を実施するために新たな事実関係を認定してレビューを行うことを禁止するものではない(We do not consider that the Article 11.3 obligation … precludes an investigating authority from developing a new factual basis pertaining to the original review period in the course of implementing the DSB recommendations and rulings pertaining to the original determination.)(7.50)、Aアルゼンチンの主張は、DSB勧告の実施一般にかかわる問題であるが、DSU19.1条はDSB勧告実施に関してWTO加盟国に一定の裁量を与えており、新たな事実を検討することを禁止することはDSU19条や21条、22条に反する。また過去の事例も、DSB勧告を実施するためには当局は新たな事実を集めて考慮する必要があることを示している(7.51-60)、B新たに提出された情報に基づきウルグアイ・ラウンド実施法129条決定を行うことを認めたので、次項ではウルグアイ・ラウンド実施法129条決定のアンチダンピング協定適合性について検討する(7.61)

 

4.ダンピングの存続又は再発の可能性に関する米国商務省決定(USDOC’s Determination Regarding the Likelihood of Continuation or Recurrence of Dumping)

パネルは、次のように述べて、商務省の措置命令全体についてのサンセット・レビュー決定(order-wide determination)がアンチダンピング協定11.3条に違反していると認めた。@第一に、商務省は、過去にダンピングが行われていた可能性(likely past dumping)を根拠にサンセット・レビュー決定を行っている点について検討する。アンチダンピング協定11.3条によれば、調査当局は実証的な証拠に基づく事実関係から導き出される理由のある結論をもとに、可能性の決定を行わなければならない(the authorities have to base their likelihood determinations in sunset reviews on reasoned conclusions drawn from an adequate factual basis premised on positive evidence)。両当事国は、過去のダンピングの可能性の決定がアンチダンピング協定2条に規定されるダンピングの決定(determination of dumping)であるか否か、また可能性に依拠して決定を行うことがアンチダンピング協定11.3条に適合的か否かについて争っているが、パネルはこれらの問題について審査しない。これらの問題の結論如何にかかわらず、商務省はアンチダンピング協定2条のダンピング(dumping)概念について分析をしているのであり、商務省の決定が11.3条に適合的であるためには、2条に規定されるダンピングの概念に関連する決定を行っている必要がある。2条によれば、ダンピングは本国価格と輸出価格との比較により計算される概念であるが、米国商務省はそのような比較を行うための情報収集すら行っていない(7.69-78)、A第二に、商務省が、ウルグアイ・ラウンド実施法129条の決定を行う際に、オリジナル(DSB勧告前)のサンセット・レビューの輸入量分析をそのまま用いたことについて検討する。まず、輸入量分析がDSB勧告及び裁定を実施するためにとられた措置か否かが問題となりうるが、輸入量分析はDSB勧告を実施するために行われた129条決定の一部を構成しており、したがってDSB勧告及び裁定を実施するためにとられた措置とみなしうる。なお、オリジナルのパネルは、別の根拠を元に米国の決定の違法性を認定したため訴訟経済の観点から輸入量分析の協定適合性を審査しておらず、またアルゼンチンはパネルの訴訟経済の決定について上訴を行っていなかったが、だからと言って輸入量分析をDSU21.5条手続きの対象とできないわけではない。この点、EC – Bed Linenにおいては、申立国のインドがオリジナル・パネル手続で違法性を立証しえなかった申立についてDSU21.5条手続きで改めて申立を行うことが認められなかったが、本件(別の根拠で決定の違法性が証明されている)とEC – Bed Linen(決定の違法性が立証されなかった)では事実関係が異なる(7.89-97)、B次に、輸入量分析のアンチダンピング協定11.3条適合性について審査する。米国商務省は、アンチダンピング措置の賦課により輸入量が減少していることを根拠に、措置が撤廃されるとダンピングが再発する可能性があると述べているが、輸入量の減少には他の理由があるとも考えられ、米国商務省の129条決定は他の理由があった可能性について十分検討していない(7.98-101)、C@〜Bより、米国商務省の決定はアンチダンピング協定11.3条に違反している(7.102)

 

5.アンチダンピング協定6条違反の申立(Alleged Violations of Article 6 of the Agreement)

パネルは、米国商務省の証拠の扱いに関するアンチダンピング協定6条適合性について、次のように述べた。@アンチダンピング協定6.1条と6.2条について、両規定は調査当局がアンチダンピング協定6.14条に基づき一定の期間内に調査やレビューを終わらせる必要があることに留意しつつも、当局が利害関係者に対して彼らの利益を擁護するための証拠を提出する機会を十分に与えるよう義務付けている(these provisions require the investigating authorities to allow adequate opportunities to interested parties for the submission of evidence that they deem relevant for their case and for the defence of their interests in investigations and reviews, while keeping in mind that these rights should not preclude the authorities from concluding investigations and reviews in a timely manner, as stated in Article 6.14)。本件においてアルゼンチンは、商務省が補足的な質問状を送付しなかったことや仮決定を行わなかったことを問題としているが、これらは必ずしもアンチダンピング協定6.1条や6.2条に義務付けられていない。また利害関係者の会合も要請があった場合に開催することが義務付けられているのみで、本件においてはそのような要請はなかった。商務省はアルゼンチン輸出企業からの手紙に返信していないが、手紙を考慮に入れて129条決定を行っている。DSU21.3条(c)の仲裁手続きの中での米国の発言は、アンチダンピング協定6.1条及び6.2条の適合性の問題に関連しない(7.112-120)、Aアンチダンピング協定6.4条について、同規定は調査当局に、実行可能な時にはいつでも、調査やサンセット・レビューに参加する利害関係者の立場の主張に関係する情報を閲覧する機会を適時与えることを義務付けている(Article 6.4 requires the investigating authorities to allow the interested parties in investigations and sunset reviews, wherever practicable, timely opportunities to see the information that is relevant to the presentation of their case.)。さらに6.4条の違反を認定するためには、問題となっている情報が利害関係者の立場の主張に関連し(relevant to the presentation of the interested parties’ cases)、アンチダンピング協定6.5条の意味で秘密とみなされず(should not be confidential)、かつ調査当局の決定において用いられるものでなければならない(must be used by the investigating authorities in their determinations)。アルゼンチンが閲覧の機会が与えられなかったと主張している5つのメモランダムのうち、1つ目と3つ目はリーズニングであって情報でなく、2つ目は公開されたデータと同じ情報を含んでいるに過ぎないが、4つ目と5つ目は利害関係者の立場の主張に関連する秘密でない情報で、商務省が実際に用いたものであり、これについて閲覧の機会を与えなかったことはアンチダンピング協定6.4条に違反する。レビューの期間が限られていたとの米国の主張はアンチダンピング協定6.4条違反を正当化するものではない(7.122-129)、Bアンチダンピング協定6.5.1条について、同規定は調査当局に秘密の情報を提供した利害関係者に対して秘密でない要約を提出するよう要請することを義務付けている(Article 6.5.1 requires investigating authorities to ask interested parties submitting confidential information to also submit non-confidential versions thereof.)。本件においてアルゼンチンが閲覧できたのは、米国企業が秘密情報を削除した書面のみであるし、商務省が当該企業に秘密でない要約の提出を求めた証拠もないので、米国はアンチダンピング協定6.5.1条に違反している(7.132-135)、Cアルゼンチンは、米国商務省が輸出企業の提出した費用データの正確性を検証せずにこれの利用を拒否したことについて、アンチダンピング協定6.6条違反を主張しているが、同条は調査当局が実際に利用した情報にのみ適用される(7.140-143)、Dアルゼンチンは、利害関係者の提出した情報の扱いについてアンチダンピング協定6.8条及び附属書Uの違反を主張しているが、アルゼンチンのこの主張は米国商務省の決定の実体的違法性に関する主張に密接に関連しており、パネルはすでに米国商務省決定の実体的違法性を認めたことから、アンチダンピング協定6.8条及び附属書Uの主張については審査する必要がない(7.144-146)、Eアルゼンチンは、米国商務省が重要な事実の一部を通知しなかったことがアンチダンピング協定6.9条に違反していると主張しているが、アルゼンチンが問題としているメモランダムは米国商務省のリーズニングを含むもので事実に関するものでないことから、6.9条に基づく主張は認められない(7.147-150)

 

 

poki_a01パネルの結論及び勧告

パネルは、以上を踏まえ、次のように結論する。

(a) (米国関税法751条(c)(4)(A)及び米国商務省規則351.218条(d)(2)と共に運用される)米国関税法751条(c)(4)(B)は、依然としてアンチダンピング協定11.3条に違反している

(b) 米国商務省が129条決定において新たな事実を根拠としたことは、アンチダンピング協定11.3条及び11.4条に違反しない。

(c) 米国商務省の129条決定は、過去のダンピングの可能性や輸入量に関して十分な事実関係に基づいておらず、アンチダンピング協定11.3条に違反した。

(d) 米国商務省は、利害関係者に証拠提出の機会を与えることについて、アンチダンピング協定6.1条及び6.2条に違反していない。

(e) 米国商務省は、利害関係者にある種の情報を閲覧する機会を与えなかったことにより、アンチダンピング協定6.4条に違反した。

(f) 米国商務省は、利害関係者に秘密の情報の秘密でない要約を提出することを要請しなかったことにより、アンチダンピング協定6.5.1条に違反した。

(g) 米国商務省は、輸出企業が提出した費用データの検証について、アンチダンピング協定6.6条に違反していない。

(h) 米国商務省は、重要な事実の通知について、アンチダンピング協定6.9条に違反していない。

 

2004年のDSB勧告及び裁定は依然として有効であるので、パネルは新たな勧告は行わない。

 

poki_a01救済

アルゼンチンは、パネルに対し、米国がアンチダンピング措置の撤廃により措置をWTO協定に適合させるよう勧告することを求めていた。

パネルは、DSU19.1条に基づき提案を行うべき特段の理由は本件にはないとして、アルゼンチンの求めを退けた。

 

 

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