WT/DS295/R

6 June 2005

Mexico – Definitive Anti-Dumping Measures on Beef and Rice

   Complaint by the United States

Report of the Panel

 

<目次>

案件

申立国

被申立国

主たる関連協定

パネリスト

参加第三国

経緯

事実関係

パネル決定の分析

1.      一般的問題

2.      メキシコによる先決的決定の請求

3.      コメに対するアンチダンピング措置に関する申立

4.      メキシコの外国貿易法とFCCP366条そのものに関する申立

パネルの結論及び勧告

 

poki_b01案件

メキシコの牛肉及びコメに対するアンチダンピング措置

 

poki_b01申立国

米国

 

poki_b01被申立国

メキシコ

 

poki_b01主たる関連協定

アンチダンピング協定(千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定; Agreement on Implementation of Article VI of the General Agreement on Tariffs and Trade 1994)、補助金協定(補助金及び相殺措置に関する協定; Agreement on Subsidies and Countervailing Measures)、DSU(紛争解決に係る規則及び手続に関する了解; Understanding on Rules and Procedures Governing the Settlement of Disputes

 

poki_b01パネリスト

Mr. Crawford Falconer (Chairperson)

Ms. Marta Calmon Lemme

Ms. Enie Neri de Ross

 

poki_b01参加第三国

中国、EC、トルコ

 

poki_b01経緯

2003年 6月16日 協議要請

2003年 9月19日 パネル設置要請

2003年11月 7日 パネル設置

2005年 6月 6日 パネル報告

2005年11月29日 上級委員会報告

2005年12月20日 パネル・上級委員会報告採択

※上級委員会報告については、上級委員会決定の分析をご参考ください。

 

poki_a01事実関係

 本件では、米国から輸入される長粒白米に対してメキシコが賦課したアンチダンピング税が問題となった。

 ダンピング認定のための調査対象期間(period of investigation)は1999年の3月1日から8月31日、損害認定のための調査対象期間は1997年、1998年、1999年のそれぞれ3月1日から8月31日と設定された。メキシコ調査当局(経済省)は、アンチダンピング調査を開始した旨を、米国政府、調査開始申請者、調査開始申請書に明記されていた輸出企業2社(Producers RiceRiceland)に通知した。

 上述の輸出企業2社と、調査開始後に申し出のあった別の輸出企業2社(Rice CompanyFarmers Rice)に対して質問書が送付され、計4社の輸出企業は2001年2月22日と2001年3月6日に質問書への回答をメキシコ調査当局に送付した。

 メキシコ調査当局は、2001年6月18日に行った仮決定において、輸出企業3社(RicelandRice CompanyFarmers Rice)についてはダンピングをしておらず残りの1社(Producers Rice)については対象産品のメキシコへの輸出がないとの認定を行うとともに、国内産業に損害は発生していないとの認定を行った。他方で2002年6月5日の最終決定においては、2社(Farmers RiceRiceland)についてはダンピングの証拠がないとして0%の課税を決定したが、1社(Rice Company)については3.93%のダンピング・マージンを認定し同率のアンチダンピング税賦課を決定した。また、残りの米国輸出企業に対してはファクツ・アベイラブルに基づき10.18%のアンチダンピング税賦課を決定した。

 

 

poki_a01パネル決定の分析

1.一般的問題(General Issues)

パネルは、DSUとアンチダンピング協定に規定される審査基準及び立証責任の配分を確認した(7.2-7)

 

2.メキシコによる先決的決定の請求(Mexico’s Request for Preliminary Rulings)

メキシコは、米国のパネル設置要請がDSU6.2条の要件を満たしていないとして、米国の申立の一部をパネルの審査対象から除外することを求めていた。パネルは、次のように述べて、メキシコの求めを退けた。@パネル設置要請においては、適正な手続(due process)を保障するために申立(claims)の簡潔な要約を示せばよく、申立の論拠(arguments)を示すことは求められていない(7.28)、A米国のパネル設置要請が、1994年のGATT6条の違反とのみ示していたことについて、米国は問題の性質についても説明をしており、1994年のGATT6条に関する米国のパネル設置要請は全体としてみればDSU6.2条の要件を満たしているといえる(7.29-31)、Bメキシコはまた、米国のパネル設置要請がいくつかのアンチダンピング協定条文を列挙しているものの、なぜ問題の措置がそれらの規定に違反しているかを十分説明していないと主張しているが、そのような説明は書面(submissions)の中で行えばよく、これをDSU6.2条違反とすることはできない(7.32-34)、C米国のパネル設置要請はまた、米国が問題としている外国貿易法の規定を明示しており、この点もDSU6.2条に違反していない(7.35-36)

メキシコは、米国のパネル設置要請に示されたアンチダンピング協定の規定の一部については協議の対象となっておらず、したがってパネル審査の対象とすることはできないと主張していた。パネルは、次のように述べてメキシコの主張を退けた。@DSU4.5条、4.7条やアンチダンピング協定17.4条は協議要請とパネル設置要請との完全な一致を求めるものではなく(do not in any way require a complete identity between the scope of the request for consultations and the request for establishment, nor do they, in our view, limit the scope of the request for establishment to the exact scope of the request for consultations)、協議要請がパネル設置要請と同じ問題に関連していることを求めているにすぎない(only requires that request for consultations relate to the same subject matter as the request for establishment of a panel)(7.39-41)、A@を踏まえると、協議要請の行われた問題を対象としている限り、パネル設置要請が協議要請に言及されていなかった協定規定に言及することに問題はない(7.43-45)

メキシコは、米国のパネル設置要請が利益の無効化侵害を示しておらずアンチダンピング協定17.5条(i)に違反したとも主張していたが、パネルは、DSU3.8条に基づき違法性を立証すれば利益の無効化侵害は一応証明されるとして、メキシコの主張を退けた(7.46-48)

 

3.コメに対するアンチダンピング措置に関する申立(Claims Relating to the Anti-Dumping Measure on Rice)

損害認定に関する申立(Claims relating to the Injury determination)

パネルは、損害認定に関する調査対象期間(1997年、1998年、1999年のそれぞれ3月から8月)が調査開始日(2000年12月11日)の15か月前、最終アンチダンピング措置発動(2002年6月)の3年近く前に設定されたことについて、次のような理由で、アンチダンピング協定3.1条、3.2条、3.4条、3.5条に違反していると認めた。@アンチダンピング協定3.1条は実証的な証拠(positive evidence)に基づき客観的な検討(objective examination)を行うことを求めている。実証的な証拠とは事件や争点に関連する事実であり(evidence which is material to the case at hand, in other words, it is to be relevant and pertinent with respect to the issue to be decided)、客観的な検討とは客観的で公平な調査過程(An objective examination … requires … investigating process establishing the facts be objective and unbiased)を意味している(7.54-55)、A調査対象期間に関する具体的・明示的な義務はアンチダンピング協定に規定されていないものの、調査対象期間設定に関する調査当局の裁量は無制約ではなく、措置の賦課を決定する調査と調査において使用するデータとの間には、当然に実質的な時間的なつながりがなければならない(there is necessarily an inherent real-time link between the investigation leading to the imposition of measures and the data on which the investigation is based)。以上のことは、1996年のGATT6.2条、アンチダンピング協定11条、アンチダンピング協定3.5条に規定されるように、アンチダンピング措置が損害の原因となっているダンピングを相殺するために発動されるということからも支持される。また、アンチダンピング協定14.2条は、ダンピングが現在損害の原因となっている証拠を示すよう求めており、損害の原因となっているダンピングについての決定は、現在の状況に関連するデータに基づいていなければならない(necessary to base a determination of dumping causing injury on data that is pertinent or relevant with regard to the current situation)。さらに、アンチダンピング慣行に関する委員会(Committee on Anti-Dumping Practices)は、調査開始に極力近い時期に調査対象期間を設定することを勧告している(7.56-63)、B@Aを踏まえると、本件における調査対象期間の設定は望ましいものとはいえないし、メキシコはなぜより最近のデータを利用できなかったのかについて十分説明をしておらず、アンチダンピング協定3.1条の実証的な証拠要件を満たしているとは言えない。また、実証的な証拠を用いずに損害認定を行ったことにより、メキシコはアンチダンピング協定3.2条、3.4条、3.5条にも違反している。メキシコのアンチダンピング協定1条及び1994年のGATT6条違反については審査する必要がない(7.64-65)

パネルは、損害認定に関する調査対象期間が一部の月(9月から2月)を除外していたことについて、次のような理由で、アンチダンピング協定3.1条及び3.5条に違反していると認めた。@アンチダンピング協定は、調査対象期間に関する明示的な義務を課していないが、すでに述べたように調査は実証的な証拠に基づく客観的な検討でなければならないし、アンチダンピング協定17.6条は当局の事実認定が適切で評価が公平かつ客観的であったかを審査することをパネルに求めている(7.77-78)、A証拠の客観的な評価を行うためには輸入の量・価格、国内産業の状態について長期的な傾向を分析する(analysis of trends over time)必要がある。この点、正当な理由なく一部の月を除外して調査を行うことは客観的とは言えないし適切な事実認定とも言えない(7.79-81)、B以上は、一部の月を調査対象期間から除外することが一切認められないことを意味しない。しかし、本件においてメキシコが行っている説明(ダンピング認定の調査対象期間1999年の3月1日から8月31日に合わせるため)は、一部の月を除外する正当な理由とは言えない。また、メキシコが用いた調査対象期間は輸入が最も増大し国内産業の状態が最も悪化する時期であり、実証的な証拠を用いた客観的な検討とは言えない(7.82-86)

パネルは、次のような理由で、ダンピング輸入の量と価格に及ぼす効果に関する分析がアンチダンピング協定3.1条及び3.2条に違反していると認めた。@輸入量の調査について調査当局は、まずは調査対象産品、すなわち長粒白米の輸入とその他のコメの輸入とを区別し(i)、その後調査対象産品の輸入のうちダンピングされているものとそうでないものを区別する(ii)必要があった(7.100)、A(i)について、本件においてメキシコは、質問状を送付されかつ輸出実績があった輸出企業3社のうち、1社のみ(Farmers Rice)のみが正確な情報を提供したとみなし、残りの2社については(Farmers Riceはダンピングをしていないと認定されていたにもかかわらず)Farmers Riceからの輸入傾向と同様であるとみなした。さらに質問状を送付されなかった残りの企業については、一定の価格以下の輸入は調査対象産品の輸入、一定の価格以上の輸入については調査対象産品ではないコメの輸入と推定した。次に(ii)について、対象産品の総輸入量から質問状に回答しかつダンピングをしていないと認定された企業の輸入量を引いたものをダンピング輸入の量と認定した。以上のように、メキシコ調査当局のダンピング輸入量に関する認定は根拠のない推定(unsubstantiated assumption)に基づくものであり、実証的な証拠に基づき適切に事実認定を行ったとは言えない(7.101-107, 110-112)、B価格に及ぼす影響についても同様に、根拠のない推定に基づいて認定を行っており、実証的な証拠を用いたとはいえない(7.106, 113)、C調査当局は自ら情報を収集する義務を負っていることからも、調査当局に十分な証拠が提供されなかったということはA及びBを正当化する理由とはなりえない(7.114-115)、Dこの点についてアンチダンピング協定6.8条及び附属書Uについて審査する必要はない(7.117)

パネルは、損害認定に関する米国のその他の申立については訴訟経済の観点から審査する必要はないと述べた(7.122, 126, 129, 132)

ダンピング・マージンと措置の適用に関する申立(Claims relating to the margin of dumping and the application of the measure)

パネルは、メキシコが米国輸出企業2社についてダンピングをしていないと認定しながらこれら企業についての調査を終了しなかったことについて、次のような理由でアンチダンピング協定5.8条に違反していると認めた。@アンチダンピング協定の「ダンピングの価格差(margin of dumping)」とは国全体のダンピングの価格差(country-wide margin of dumping)ではなく個々の輸出者又は生産者のダンピングの価格差(individual margin of dumping of an exporter or producer)について言及しており、アンチダンピング協定5.8条第2文によれば個々の輸出者のダンピングの価格差がゼロか僅少(de minimis)のときはその輸出者についての調査を終了しなければならない(7.135-142)、Aメキシコは、(i)すべての輸出者のダンピングの価格差が僅少以下でなければならない、(ii)ダンピングの価格差が僅少以下の輸出者にアンチダンピング税を課さなければ問題とならない、と主張しているが、いずれの主張もアンチダンピング協定の解釈として認められない(7.143-144)

パネルは、メキシコが調査対象期間中に輸出のなかった企業(Producers Rice)に対してファクツ・アベイラブルに基づきダンピングの価格差を計算したことについて、次のような理由で、(アンチダンピング協定附属書Uパラ7を踏まえて解釈するところの)アンチダンピング協定6.8条に違反していると認めた。@まずアンチダンピング協定9.4条について、この規定はサンプル調査に関する具体的な要件等を定めたものであり、その他の状況(たとえば本件のような、調査対象期間中に輸出のなかった企業の扱い)に適用することはできない(7.156-159)、A他方でアンチダンピング協定6.8条及び附属書Uパラ7は、調査当局がファクツ・アベイラブルを用いることのできる要件について規定しており、本件の状況に適用される。本件において、Producers Riceは質問状に回答するなどしており、ファクツ・アベイラブルを用いるための条件が満たされていなかったし、メキシコ調査当局は「最善の」情報か否かを精査することなく個別にダンピングの価格差を算出された企業よりも高い価格差を用いてProducers Riceに対する認定を行っている(7.160-168)、Bなお、この点についてアンチダンピング協定6.2条及び6.4条に違反しているか否かを審査する必要はない(7.168)

パネルは、次のような理由で、メキシコがすべての知られている利害関係者に調査の通知を行わなかったとしてアンチダンピング協定6.1条及び12.1条違反を、また知られていたか合理的に知ることができた輸出者又は生産者にファクツ・アベイラブルを用いてダンピングの価格差を計算したとしてアンチダンピング協定6.8条及び附属書Uパラ1違反を、知られていたか合理的に知ることができた輸出者又は生産者に個別のダンピング価格差を計算しなかったとしてアンチダンピング協定6.10条違反を認定した。@アンチダンピング協定6.10条は、個々の知られている輸出者又は生産者に対してダンピングの価格差を計算しなければならないという一般原則を定めている。「知られている」輸出者又は生産者とは調査当局が認知している(has learned about or has knowledge of)者を意味するが、調査開始申請者によって調査当局に認知された輸出者又は生産者に限られない。アンチダンピング協定により、調査当局は情報の収集を積極的に行う義務を負っていることを考慮すると、事実認定を行う公平で客観的な当局が合理的に認知しえた輸出者又は生産者(exporters or producers that an unbiased and objective investigating authority properly establishing the facts would be reasonably expected to have become conversant with)も「知られている」輸出者又は生産者に含まれると解される(7.181-187)、Aアンチダンピング協定6.1条がすべての利害関係者に通知を行うことを調査当局に義務付けていること、アンチダンピング協定6.8条が通知を受けていない利害関係者について情報の入手を許さない又は情報を提供しないとみなすことを認めていないことからも、@の解釈は支持される(7.190-195)、B本件においてメキシコ調査当局は、申請書に明記された2社と、自ら申し出た2社以外にも輸出者又は生産者が存在することを知り得たにもかかわらず積極的に調査を行っていない(7.197-199)、Cなお、この点についてアンチダンピング協定6.6条、9.4条、9.5条に違反しているか否かを審査する必要はない(7.202)

パネルは、ダンピング認定に関する米国のその他の申立については訴訟経済の観点から審査する必要はないと述べた(7.205, 209, 212)

 

4.メキシコの外国貿易法とFCCP366条そのものに関する申立(Claims concerning Mexico’s Foreign Trade Act and Section 366 of Mexico’s FCCP As Such)

パネルは、次のような理由で、メキシコの外国貿易法53条そのものがアンチダンピング協定6.1.1条及び補助金協定12.1.1条に違反していると認めた。@アンチダンピング協定6.1.1条は、30日間の質問状回答期間を設けることを義務付けており、回答期間は各輸出者又は生産者が質問状を受け取った日から計算しなければならない。外国貿易法53条は、質問状回答期間をすべての輸出者又は生産者について調査開始日から30日間と一律に決定しており、調査開始後に質問状を送付された輸出者又は生産者には30日間の回答期間が与えられないことになる(prevent Mexico from giving each exporter or foreign producer receiving a questionnaire 30 days to respond)。仮に回答期間の延長が認められるとしても、当初から30日間の回答期間を与えないことはアンチダンピング協定6.1.1条の違反となる(7.217-222)、A補助金協定12.1.1条はアンチダンピング協定6.1.1条と同一の義務を定めており、外国貿易法53条は補助金協定12.1.1条にも違反している(7.223)、Bメキシコは、メキシコの国内法上WTO協定を含む国際協定が「自動執行性」を有し、いかなる国内法もメキシコの国際義務に適合するように適用されなければならない([I]n Mexican law, international agreements such as the WTO agreements are “self-executing” and automatically applicable in Mexico, and that any domestic law has to be applied in a manner which is compatible with Mexico’s international obligations.)と主張している。確かにWTO協定が直接的効果を持つことにより当局が国内法をWTO協定に適合するよう適用する裁量を有する場合もありうる(the direct effect of the WTO Agreements in Mexican law may prove important in case the domestic law leaves the authority with discretion to apply the law in a WTO consistent manner)が、アンチダンピング協定や補助金協定のように国際義務を実施するための国内法の場合は、WTO協定の直接的効果の有無にかかわらず国内法がWTO協定適合性審査の対象となる(However, in case the domestic law which implements Mexico’s international commitments with regard to for example the AD Agreement and SCM Agreement, as does the Act, is clear and manifestly conflicts with and effectively impairs the enjoyment of the rights which the affected party is unconditionally entitled to under the WTO Agreement, as is the case here, then the direct effect of the WTO Agreements cannot shield from the domestic law from scrutiny by the WTO panels.)。とりわけ本件においては、外国貿易法53条がWTO協定適合的に解釈する余地のないことに留意する(7.224-225)

パネルは、次のような理由で、メキシコの外国貿易法64条そのものがアンチダンピング協定6.8条及び附属書Uパラ1、3、5、7と、補助金協定12.7条に違反すると認めた。@アンチダンピング協定6.8条は一定の状況においてファクツ・アベイラブルを利用することを認めているが、外国貿易法64条はアンチダンピング協定6.8条で規定されていない状況においてもファクツ・アベイラブルを利用することを認めている。また、6.8条は情報を提供しない利害関係者への罰則として適用されることは意図していないし、附属書Uパラ7は二次的な情報の利用が結果として調査に協力しなかった利害関係者に不利な結果をもたらすという自明の事実を述べているにとどまるが、外国貿易法64条はファクツ・アベイラブルとして常に最も高い価格差を用いることを求めており、調査当局が最善の情報を利用することを妨げている(7.237-238)、A外国貿易法64条Tは、調査に現れなかった生産者に最も高い価格差を適用することを規定しているが、調査に現れなかった生産者にファクツ・アベイラブルを利用することは認められるとしても、最も高い価格差を適用することは認められない。また、外国貿易法64条Vは、調査対象期間中に輸出を行っていなかった生産者に最も高い価格差を適用することを規定しているが、調査対象期間中に輸出を行っていなかった生産者にファクツ・アベイラブルを用いることが仮に認められるとしても、最も高い価格差を適用することは上述した理由で認められない(7.239-241)、Bなお、この点についてアンチダンピング協定9.3条、9.4条、9.5条、補助金協定19.3条との適合性を審査する必要はない(7.242)

パネルは、次のような理由で、外国貿易法68条そのものがアンチダンピング協定5.8条、9.3条、11.2条と補助金協定11.9条、21.2条に違反していると認めた。@外国貿易法68条は、オリジナル調査においてダンピングを行っていない又は補助金を受け取っていないと認定された生産者に対しても見直しを行うことを義務付けている。しかし、アンチダンピング協定5.8条はデミニミス以下のダンピングを認定された輸出者について調査を終了することを義務付けており、その論理的な帰結としてオリジナル調査でデミニミス以下のダンピングと認定された輸出者を見直しの対象とすることは認められない。調査を終了すべき輸出者について見直しを義務付けている外国貿易法68条そのものはアンチダンピング協定5.8条及び補助金協定11.9条に違反している(7.249-251)、Aまた、外国貿易法68条は、行政見直しを求める輸出者のメキシコへの輸出量が「代表的(representative)」とみなしうる場合にのみ措置の見直しを行うと定めているが、アンチダンピング協定9.3条、11.2条、補助金協定21.2条はそのような代表性要件を求めていない(7.252-260)

パネルはまた、新規供給者に対する迅速な見直しを行うには当該輸出者がその輸出量が「代表的」であることを証明しなければならないと外国貿易法89条Dが規定していることについて、アンチダンピング協定9.5条と補助金協定19.3条はそのような代表性要件を定めておらず、したがって外国貿易法89条Dそのものはアンチダンピング協定9.5条と補助金協定19.3条に違反していると認めた(7.266-269)

パネルは、外国貿易法93条Vが調査期間中に対象産品を輸入した輸入者への罰金を定めていることについて、この罰金はダンピング又は補助金交付に対して課せられるものであり、ダンピング又は補助金交付に対してアンチダンピング税又は補助金相殺措置の賦課しか認めていないアンチダンピング協定18.1条と補助金協定32.1条に違反していると認めた(7.273-280)

パネルは、外国貿易法68条及び97条とFCCP(連邦民事手続法)366条そのものがアンチダンピング協定9.3条、9.5条、11.2条、補助金協定19.3条、21.2条に違反するとの米国の主張について、次のように認定した。@外国貿易法68条及び97条は、司法審査が行われている措置については一切の見直しを中断することを義務付けているが、いったん発動された措置は司法審査の有無にかかわらず確定的な(definitive)措置とみなされるのであり、確定的な措置について見直しを中断することを義務付けた両規定はアンチダンピング協定9.3.2条、11.2条、補助金協定21.2条に違反している(7.289-297)、AFCCP366条については、米国は立証責任を果たしていない(7.298)

 

 

poki_a01パネルの結論及び勧告

パネルは、以上を踏まえ、メキシコ調査当局の損害認定について次のように結論する。

(a) メキシコは、調査対象期間の設定(調査開始時からの時間的ギャップ)について、アンチダンピング協定3.1条、3.2条、3.4条、3.5条に違反した。この点について1994年のGATT6.2条及びアンチダンピング協定1条との適合性は訴訟経済の観点から判断しない。

(b) メキシコは、調査対象期間の設定(6ヶ月間のみ審査)について、アンチダンピング協定3.1条及び3.5条に違反した。この点についてアンチダンピング協定1条及び6.2条との適合性は訴訟経済の観点から判断しない。

(c) メキシコは、実証的な証拠に基づく客観的な検討を行わなかったことについて、アンチダンピング協定3.1条及び3.2条に違反した。この点についてアンチダンピング協定6.8条及び附属書Uとの適合性は訴訟経済の観点から判断しない。

したがって以下の点については訴訟経済の観点から審査を行う必要はないと判断する。

(a) メキシコのダンピング輸入量の増加や価格に与える影響についての検討がアンチダンピング協定3.1条及び3.2条に違反しているか。

(b) メキシコの経済的要因に関する検討がアンチダンピング協定3.1条及び3.4条に違反しているか。

(c) メキシコのダンピングではない輸入の扱いがアンチダンピング協定3.1条、3.2条、3.5条に違反しているか。

(d) メキシコの認定理由の説明がアンチダンピング協定12.2条に違反しているか。

 

パネルはまた、メキシコ調査当局のダンピング認定について次のように結論する。

(a) メキシコは、ダンピングをしていないと認定された輸出企業2社について調査を終了せず措置の対象としており、アンチダンピング協定5.8条に違反した。

(b) メキシコは、調査対象期間において輸出を行っていなかった生産者にファクツ・アベイラブルを適用しており、アンチダンピング協定6.8条及び附属書Uパラ7に違反した。この点についてアンチダンピング協定6.2条、6.4条、9.5条、附属書Uパラ3、5、6との適合性は訴訟経済の観点から判断しない。

(c) メキシコは、調査の対象とならなかった生産者と輸出者にファクツ・アベイラブルを適用したことについて、アンチダンピング協定6.1条、6.8条、附属書Uパラ1と、6.10条、12.1条に違反した。この点についてアンチダンピング協定6.6条、9.4条、9.5条、附属書Uパラ7との適合性は訴訟経済の観点から判断しない。

したがって以下の点については訴訟経済の観点から審査を行う必要はないと判断する。

(a) メキシコの認定に関する情報提供がアンチダンピング協定12.2条に違反しているか。

(b) メキシコのProducers Rice及び審査の対象とならなった輸出者及び生産者に対する不利なファクツ・アベイラブルの利用がアンチダンピング協定1条及び9.3条に違反しているか。