WT/DS322/AB/R
9 January 2007
United States – Measures Relating to
Zeroing and Sunset Reviews
Report of the Appellate Body
<目次>
1.個別取引対個別取引の比較及び加重平均対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイングそのもの
2.オリジナル調査、定期見直し、新規供給者見直しにおけるゼロイングそのもの
ゼロイング及びサンセット・レビューに関する措置
日本
被上訴国・上訴国
米国
アルゼンチン、中国、EC、香港、インド、韓国、メキシコ、ニュージーランド、ノルウェー、タイ
Giorgio Sacerdoti (Presiding Member)
Georges Abi-Saab
A.V. Ganesan
アンチダンピング協定(千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定; Agreement on Implementation of Article VI of the General
Agreement on Tariffs and Trade 1994)、1994年のGATT(千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定;
General Agreement on Tariffs and Trade 1994)、DSU(紛争解決に係る規則及び手続に関する了解;
Understanding on Rules and Procedures Governing the Settlement of Disputes)
2004年11月24日 協議要請
2005年 2月 4日 パネル設置要請
2005年 2月28日 パネル設置
2006年 9月20日 パネル報告
2007年 1月 9日 上級委員会報告
2007年 1月23日 パネル・上級委員会報告採択
※パネル報告については、パネル報告分析を参考にしてください。
※事実関係については、パネル報告分析を参考にしてください。
1.個別取引対個別取引の比較及び加重平均対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイングそのもの(Zeroing As Such in Original Investigations Based on Transaction-to-Transaction
and Weighted Average-to-Transaction Comparisons)
対象措置(Measures at Issue)
米国は、個別取引対個別取引の比較及び加重平均対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイング手続そのものをWTO紛争処理制度の審査対象とすることができると認めたパネルの認定に対し、パネルは米国の個別取引対個別取引の比較及び加重平均対個別取引の比較の運用実態に関して十分検討しておらず、パネルが一般的かつ将来的に適用される「規則又は規範」の存在を認めたことは紛争解決了解(DSU)11条に違反すると主張していた(78)。
上級委員会は、パネルは証拠の評価に関して一定の裁量を有しており、本件においてその裁量を逸脱したとは認められないとして、米国の主張を退けた(82-88)。
日本の協議要請(Japan’s Request for Consultations)
米国はまた、日本の協議要請は個別取引対個別取引の比較及び加重平均対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイング手続に言及しておらず、したがってパネルがこれを審査の対象としたことはDSU11条に違反するとも主張した。
上級委員会は、日本の協議要請は個別取引対個別取引の比較及び加重平均対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイング手続に言及していると認められると述べて、米国の主張を退けた(94-95)。
なお、日本は、米国が上記主張をパネル段階で行わなかったということは、米国が個別取引対個別取引の比較及び加重平均対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイング手続についての協議の欠如を容認し、当該手続について協議する権利を放棄したことを意味しているとも主張していたが、上級委員会はこの点については検討する必要がないと述べた(96)。
2.オリジナル調査、定期見直し、新規供給者見直しにおけるゼロイングそのもの(Zeroing As Such in Original Investigations, Periodic Reviews, and
New Shipper Reviews)
日本は、個別取引対個別取引の比較におけるゼロイングについてのみ、上訴した。
「ダンピング」と「ダンピング・マージン」の概念(The Concepts of
“Dumping” and “Margins of Dumping”)
上級委員会は、ダンピングとダンピング・マージンの概念について、次のように述べた。@1994年のGATT6条に定義されるように、ダンピングはある「産品」がその正常の価額よりも低い価格で輸出されることを意味し、アンチダンピング協定もこの定義を引き継いでいることから、ダンピング・マージンは「産品」に関して認定されなければならない。言い換えれば、タイプ、モデル、あるいは分類ごとに算出される正常の価額と輸出価格との差額は、それ自体ではダンピング・マージンではなく、ダンピング・マージンは産品についてのみ認定されうる(108-110, 115)、Aアンチダンピング協定によれば、ダンピングの認定は各輸出者または外国の生産者に対して行われるのであり、輸出者または外国の生産者が行うすべての輸出取引の価格を考慮に入れる必要がある(111-112)、Bアンチダンピング協定や1994年のGATTはダンピングそのものを問題としているのではなく、ダンピングによって実質的な損害が生じた(または生じる恐れがある)場合にダンピング・マージンを超えないアンチダンピング税の賦課を認めたにとどまる(113-114)、
個別取引対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるダンピング・マージンの認定(Determination of
Margins of Dumping Based on Transaction-to-Transaction Comparisons in Original
Investigations)
上級委員会は、次のように述べて、個別取引対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイング手続はアンチダンピング協定2.4.2条に違反しないとのパネル認定を破棄し、米国は同条に違反していると認めた。@上級委員会は、US – Softwood Lumber
V(Article 21.5 – Canada)において、産品についてのダンピング・マージンを認定するために、個別取引対個別取引の比較によって算出された結果はすべてまとめなければならないとして、個別取引対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイングの適用をアンチダンピング協定2.4.2条違反と認定している。この上級委員会報告は、アンチダンピング協定や1994年のGATT6.1条及び6.2条に整合的であり、本件においても踏襲すべきものである(119-122)、Aまた、個別取引対個別取引の比較におけるゼロイングと加重平均対加重平均の比較におけるゼロイングとに異なる扱いをすべき根拠はない。「比較可能なすべての輸出取引(all comparable export transactions)」という文言は個別取引対個別取引の比較には関係のないものであり、この文言がないからといって個別取引対個別取引の比較においてゼロイングが許されるということにはならない(123-126)、Bさらに、アンチダンピング協定はモデルごとに算出された差額をどのようにまとめるかについて明文で規定していないが、ゼロイングを行うことで、ダンピング認定の場面では一部の取引を「ダンピングではない」として無視し、他方で損害認定の場面ではすべての取引を「ダンピング輸入」として評価の対象に加えることとなってしまう(127-129)、Cアンチダンピング協定2.4.2条第2文に関し、パネルは、同規定に例外として規定される加重平均対個別取引の比較でもゼロイングが禁止されていると仮定すれば、加重平均対加重平均の比較の計算結果と加重平均対個別取引の比較の計算結果が同一になってしまうことから、加重平均対個別取引の比較においてはゼロイングは禁止されていないと解すべきで、したがって個別取引対個別取引の比較においても同様にゼロイングは禁止されていないと解すべきであると述べている。しかし、US – Softwood Lumber
V (Article 21.5 – Canada)上級委報告で述べたように、計算の結果が同一になるということ、また加重平均対個別取引の比較が例外として規定されていることは、ゼロイングが禁止されていないことの理由にならない。仮に加重平均対個別取引の比較におけるゼロイングが認められているとしても、だからといって個別取引対個別取引の比較におけるゼロイングも認められているとは言えない(130-136)。
上級委員会は、上記認定を根拠に、個別取引対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイングはアンチダンピング協定2.1条、1994年のGATT6.1条及び6.2条に違反していないとしたパネル認定を破棄した(139)。ただし、アンチダンピング協定2.1条及び1994年のGATT6.1条は独立の義務を課すものではなく、これらに関する認定は紛争解決を促すものでもないとして、これら規定の違反認定を求めた日本の主張は退けた(140)。
上級委員会は、次のように述べて、個別取引対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイングはアンチダンピング協定2.4条に違反していないとしたパネル認定を破棄し、米国が同条に違反していると認めた。@アンチダンピング協定2.4条の「公正な比較」の中身はアンチダンピング協定2.4.2条に依存しているとのパネルの解釈は誤っている(143)、A個別取引対個別取引の比較においてゼロイングを行うことは、一部の輸出取引の価格をゆがめることになることから、2.4条の「公正な比較」要件を満たしていない(146)。
定期見直し及び新規供給者見直しにおけるゼロイングそのもの(Zeroing As Such in
Periodic Reviews and New Shipper Reviews)
上級委員会は、次のように述べて、定期見直し及び新規供給者見直しにおけるゼロイングに関するパネル認定を破棄し、この点に関する米国のアンチダンピング協定及び1994年のGATT違反を認めた。@まず、アンチダンピング協定9条に関して、すでに述べたように、同条の「ダンピング」や「ダンピング・マージン」という言葉は調査の対象となった「産品」に関して算定されなければならない。定期見直しに関係するアンチダンピング協定9.3条は、アンチダンピング税の評価の方法について規定しているのではなく、輸出者に賦課されるアンチダンピング税に上限を設けるものである。税額評価制度の如何にかかわらず(retrospectiveかprospectiveか)、輸入者に税を還付することは認められるものの、輸出者に支払われるアンチダンピング税の合計が9.3条で設定された上限を超えてはならない。新規供給者見直しに関するアンチダンピング協定9.5条についても同じことが言える(151, 155-156, 162-163, 165)、A@より、定期見直し及び新規供給者見直しにおけるゼロイングそのものがアンチダンピング協定9.3条及び9.5条、1994年のGATT6.2条に違反していないとのパネル認定を破棄し、米国がこれらの規定に違反していると認定する(166)、Bアンチダンピング協定2.4条に関して、定期見直し及び新規供給者見直しにおけるゼロイングは上限を超えて輸出者にアンチダンピング税を賦課することになるため、2.4条の「公正な比較」要件を満たしておらず、この点に関するパネル認定を破棄して定期見直し及び新規供給者見直しにおけるゼロイングそのものが同条に違反していると認める(168-169)、C以上より、米国は定期見直し及び新規供給者見直しにおけるゼロイングそのものに関してアンチダンピング協定2.1条、9.1条、9.2条、1994年のGATT6.1条に違反していないとしたパネル認定を破棄する。ただし、米国がこれらの規定に違反しているか否かを認定する必要はない(170-171)。
3.定期見直しにおけるゼロイングの適用(Zeroing As Applied in Periodic Reviews)
上級委員会は、すでに定期見直しにおけるゼロイングそのものの違反をみとめていること、定期見直しにおけるゼロイングの結果各輸出者に設定された上限以上のアンチダンピング税を賦課されてしまうことなどから、11の定期見直しにおけるゼロイングの適用がアンチダンピング協定2.1条、2.4条、9.1条、9.3条、1994年のGATT6.1条及び6.2条に違反していないとのパネル認定を破棄し、これらの適用案件がアンチダンピング協定2.4条及び9.3条と1994年のGATT6.2条に違反したと認めた(174-176)。
上級委員会は、同じ適用案件に関し、アンチダンピング協定2.1条及び9.1条、1994年のGATT6.1条に違反したか否かを認定する必要はないと述べた(177)。
4.サンセット・レビューにおけるダンピング・マージン(Margins of Dumping in Sunset Reviews)
上級委員会は、米国は本件で問題となっているサンセット・レビューにおいて、アンチダンピング協定2.4条及び9.3条に違反する方法で認定されたダンピング・マージンを元にダンピングの可能性の認定を行っていることから、米国がこの点アンチダンピング協定2条及び11条に違反していないとのパネル認定を破棄し、米国はアンチダンピング協定11.3条に違反したと認めた(182-186)。
上級委員会は、同じサンセット・レビューにおける決定がアンチダンピング協定2.1条及び2.4条、1994年のGATT6.1条及び6.2条に違反したか否かを認定する必要はないと述べた(187)。
5.アンチダンピング協定17.6条(ii)(Article 17.6(ii) of the Anti-Dumping
Agreement)
上級委員会は、アンチダンピング協定17.6条(ii)の審査基準には十分に配慮したものの、同条第2文が適用される余地はなかったと述べた(189)。
以上より、上級委員会は次のように結論する。
(a) 「ゼロイング手続」が紛争処理制度の審査対象となるというパネル認定を支持し、この点に関するDSU11条に基づく米国の上訴を退ける。
(b) 個別取引対個別取引の比較を用いたオリジナル調査におけるゼロイングそのものがアンチダンピング協定2.1条、2.4条、2.4.2条、1994年のGATT6.1条,6.2条に違反していないとのパネル認定を破棄し、この点米国がアンチダンピング協定2.4条及び2.4.2条に違反していると認める。
(c) 定期見直しにおけるゼロイングそのものがアンチダンピング協定2.1条、2.4条、9.1〜9.3条に違反していないとのパネル認定を破棄し、この点米国がアンチダンピング協定2.4条、9.3条、1994年のGATT6.2条に違反していると認める。
(d) 新規供給者見直しにおけるゼロイングそのものがアンチダンピング協定2.1条、2.4条、9.5条、1994年のGATT6.1条、6.2条に違反していないとのパネル認定を破棄し、この点米国がアンチダンピング協定2.4条、9.5条に違反していると認める。
(e) 11の定期見直しにおけるゼロイングの適用に関し、米国がアンチダンピング協定2.1条、2.4条、9.1条〜9.3条、1994年のGATT6.1条、6.2条に違反していないとのパネル認定を破棄し、この点米国はアンチダンピング協定2.4条、9.3条、1994年のGATT6.2条に違反したと認める。
(f) 米国のサンセット・レビューにおけるダンピング・マージンがアンチダンピング協定2条、11条に違反していないとのパネル認定を破棄し、この点米国がアンチダンピング協定11.3条に違反したと認める。
上級委員会は、DSB(紛争解決機関)が米国に対し、アンチダンピング協定及び1994年のGATTに違反すると認定された措置について、協定上の義務に適合させるよう求めることを勧告する。
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