WT/DS336/AB/R

28 November 2007

Japan – Countervailing Duties on Dynamic Random Access Memories (DRAMS) from Korea

Report of the Appellate Body

 

<目次>

案件

上訴・被上訴

上訴・上訴

参加第三国

上級委員メンバー

主たる関連協定

経緯

事実関係

上級委員会報告の分析

1.   2002金融支援措置委託若指示つい認定

2.   2002年金融支援措置利益つい認定

3.   利益計算

4.   利益計算方法

5.   利益配分

6.   2001年金融支援措置利益つい認定

7.   利害関係

8.   資金直接的移転

9.   損害因果関係

10.  業務上秘密情報

上級委員会の結論

 

poki_b01案件

韓国DRAMに対する相殺関税

 

poki_b01上訴・被上訴国

日本

 

poki_b01被上訴・上訴国

韓国

 

poki_b01参加第三国

EC、米国

 

poki_b01上級委員メンバー

David Unterhalter (Presiding Member)

A.V. Ganesan

Giorgio Sacerdoti

 

poki_b01主たる関連協定

SCM協定(補助金及び相殺措置に関する協定;Agreement on Subsidies and Countervailing Measures)、DSU(紛争解決に係る規則及び手続に関する了解; Understanding on Rules and Procedures Governing the Settlement of Disputes

 

poki_b01経緯

2006年 3月14日 協議要請

2006年 5月18日 パネル設置要請

2006年 6月19日 パネル設置

2007年 7月13日 パネル報告

2007年11月28日 上級委員会報告

2007年12月17日 パネル・上級委員会報告採択

※パネル報告については、パネル報告分析を参考にしてください。

 

 

poki_a01事実関係

※事実関係については、パネル報告分析を参考にしてください。

 

poki_a01上級委員会報告の分析(()内の数字は段落番号)

1.2002年金融支援措置に係る委託若しくは指示についての認定(The JIA’s Determination of Entrustment or Direction with respect to the December 2002 Restructuring)

 日本は、2002年12月の金融支援措置の「委託若しくは指示」の認定がSCM協定1.1条(a)(1)(iv)に違反したとのパネル認定に対し、上訴していた。

 上級委員会は、次のように述べて、パネル認定を破棄したが、日本の「委託若しくは指示」認定のSCM協定適合性については判断しなかった。@過去の事案で述べたように、調査当局が状況証拠を総合して(totality of circumstantial evidence)認定を行っている場合には、パネルは個々の証拠の関係を踏まえつつすべての証拠を総合して検討し、調査当局が妥当で理由のある結論を導いたか否かを審査しなければならない(…this imposes upon a panel the obligation to consider, in the context of the totality of the evidence, how the interaction of certain pieces of evidence may justify certain inferences that could not have been justified by a review of the individual pieces of evidence in isolation. … In addition, if an investigating authority explains that the totality of the evidence supports the conclusion reached, a panel must undertake a critical examination of whether, in the light of the evidence on record, the investigating authority’s conclusion was reasoned and adequate.) (131)、A本件パネルは、商業的な合理性に関する日本の調査当局の評価が誤りであることを根拠に違反認定を行っているが、その他の証拠に基づけば日本の「委託若しくは指示」認定が妥当であったか否かを検討していない。日本の調査当局は商業的な合理性以外の様々な証拠を総合的に評価して「委託若しくは指示」についての結論を下しており、パネルが理由を説明することなく商業的な合理性以外の証拠について検討しなかったことは、DSU11条で求められている問題の客観的な評価とは言えない(132-139)、BAにより、日本の2002年金融支援措置に係る「委託若しくは指示」についての認定がSCM協定1.1条(a)(1)(iv)に違反したとのパネル認定を破棄する。しかし、パネルによる関連証拠の評価が不十分であるため、日本の当該認定が同条に適合的であったか否かを最終的に判断することはできない(140-142)

 

2.2002年金融支援措置に係る利益についての認定(The JIA’s Determination of Benefit with respect to the December 2002 Restructuring)

 日本は、2002年12月の金融支援措置の利益に関する認定がSCM協定1.1条(b)及び14条に違反したとのパネル認定に対し、上訴していた。

 上級委員会は、次のように述べてパネル認定を支持した。@まず、日本の上訴書面は主張の十分な論拠を示していることから、日本の書面が上級委員会検討手続21.2条に違反するとの韓国の主張は認められない(145-146)、Aドイツ銀行の報告の独立性に関するパネルの審査に問題はなかった(152-157)、B調査当局の認定の主たる根拠(underlying rationale behind [the] conclusions)は当局の認定の中に示されていなければならず、またパネルの審査は認定の中に示された根拠に基づき行わなければならない。したがって日本の主張の一部を事後的な正当化(ex post rationalization)として検討の対象としなかったことは妥当であった。また、ドイツ銀行の報告の不自然さに関するパネルの審査も妥当なものであった(158-162)、C以上から、日本がドイツ銀行の報告の不適切さを理由に商業的合理性を否定する認定を行ったことはSCM協定1.1条(b)及び14条に違反しているとのパネル認定を支持する(163-164)

 

3.利益の額の計算(Calculation of the Amount of Benefit)

 日本は、利益の額の計算はSCM協定1.1条(b)及び14条に違反したとのパネル認定に対して、上訴していた。

 上級委員会は、パネルと異なる理由で、日本の利益の額の計算がSCM協定1.1条(b)及び14条に違反したと認めた。@日本は、外部の債権者と内部の債権者の双方を踏まえたベンチマークに基づき利益を計算しており、外部の債権者のみをベンチマークとして利益計算をしたとのパネル認定は誤りであると主張している。しかし、外部の債権者と内部の債権者という区別は重要ではなく、市場で制約なく取引が行われた場合の条件との比較(The terms of a financial transaction must be assessed against the terms that would result from unconstrained exchange in the relevant market)により利益の有無を判断しなければならない。つまり、基準となるべきは、合理的な投資家が基準とする市場水準(the market standardaccording to which rational investors act)である。SCM協定14条も、(a)項が「民間投資者の投資に関する通常の慣行」を、(b)項が「企業が市場で実際に同等な商業的貸付けを受ける場合に当該商業的貸付けに対して支払う額」をベンチマークとしており、「外部」と「内部」の債権者を区別していない。したがって、日本が内部の債権者の基準に依拠しているか否かを判断基準としたパネルのアプローチは誤りであった(171-174)、Aしかし、債権から転換された株式の価値がゼロであるとの日本の認定は十分な根拠がないとのパネル認定は妥当であった。なお、パネルは、日本がハイニックスや株主の視点について配慮していないことを明らかにするために、既存株主の所有する株式の希薄化の問題に言及したに過ぎず、希薄化の問題は本件に関連する事実ではない(175-182)、BAより、日本が利益を不当に高く計算したとのパネルの結論は誤りでないし、また本パネルのDSU11条の違反もないことから、日本の利益の額の計算に関するパネルの違反認定を結論としては支持する(184-185)

 

4.利益の計算方法(Benefit Calculation Methods)

 日本は、国内法令又は実施規則に規定されない方法で利益の額を計算したことによりSCM協定14条柱書に違反したとのパネル認定に対し、上訴していた。

 上級委員会は、次のように述べて、パネル認定を破棄した。@SCM協定14条柱書は利益の計算方法に関して加盟国に一定の裁量を与え、(a)から(d)項は国内法令又は実施規則に規定された計算方法を状況に応じて適合させることを認める一般的な指針を定めている。これは、利益計算について柔軟性を保つ必要性と透明性を確保する必要性をバランスした結果であり(strikes an appropriate balance between the flexibility that is needed for adapting the benefit calculation … to the particular factual situation of an investigation, and the need to ensure that other Members and interested parties are made aware of the method that will be used by the Member concerned)、調査で用いられた方法が国内法令又は実施規則から導き出されるか認識されうるものであるならば(…if the method used in a particular case can be derived from, or is discernible from, the national legislation or implementing regulations)、14条柱書の要件は満たされているといえる(190-192)、Aパネルは、日本が用いた計算式をSCM協定14条の意味での「方法」とみなしているが、日本が用いた計算式はベンチマークとなる金利の計算や利益の配分計算のためのものであり、14条の意味での方法、すなわち「利益を計算するために使用する方法」の一要素に過ぎず、それ自体を14条の「方法」とみなすことはできない(193-198)、Bパネルは、利益を計算するための手段が全体として(methodologies, in their entirety)日本の相殺関税に関するガイドラインに規定されているか否かを判断すべきであった(199)

 

5.利益の配分(Allocation of Benefit)

 日本は、補助金が2001年から2005年まで存在したと認定しながら2006年に相殺関税を賦課したことはSCM協定19.4条に違反しているとのパネル認定に対し、上訴していた。

 上級委員会は、次のように述べて、日本の主張を退けた。@日本は、パネルのSCM協定19.4条の解釈は誤りであり、過去の調査対象期間中の補助金認定に基づき相殺関税を賦課することができると主張している。確かに、パネルも認めている通り、調査当局は過去の補助金に関する認定を相殺関税賦課の時点で更新(update)する必要はない。しかし、繰り返されることのない補助金(non-recurring subsidy)の場合、その利益がもはや存在していない段階で相殺関税を賦課することは、補助金の額を超えて相殺関税を賦課するに相当し、したがってSCM協定19.4条に反する(205-211)、A日本は、利益を2005年までの5年間にわたって配分したからと言ってその後(とりわけ2006年に)利益が存在しなくなるわけではないとして、パネルはDSU11条に基づく問題の客観的な評価を行っていない主張しているが、上級委員会は、この点に関するパネルの評価に誤りがあったとは認めない(212-215)

 

6.2001年金融支援措置に係る利益についての認定(The JIA’s Determination of Benefit with respect to the October 2001 Restructuring)

 韓国は、2001年10月金融支援措置の利益に関する認定はSCM協定1.1条(b)及び14条に違反していないとのパネル認定に対し、上訴していた。

 上級委員会は、次のように述べて、韓国の主張を退けた。@Canada Aircraft上級委報告で述べたように、利益が与えられたか否かは、市場をベースにして「資金面での貢献」によって貿易を歪める効果があったか否かに基づき判断しなければならない(225)、Aパネルは、「委託若しくは指示」の認定と、「利益」の認定のいずれにおいても、「非商業的考慮」という同じような証拠に依拠しているが、だからと言って「委託若しくは指示」と「利益」とを合わせて(conflate)認定しているわけではなく、それぞれ別の問題として適切に認定している(226)、B「委託若しくは指示」について矛盾する証拠が存在していたからと言って「委託若しくは指示」の存在が否定されなければならないわけではないし、本件においてはそのような矛盾する証拠は存在しなかった(227)、C4債権者以外の債権者の位置づけについてのパネルの評価についても誤りはない(228)

 

7.利害関係を有する者(Interested Parties)

 韓国は、利害関係を有する者の認定とファクツアベイラブルの利用はSCM協定12.7条及び12.9条に違反していないとのパネル認定に対し、上訴していた。

 上級委員会は、次のように述べて、韓国の主張を退けた。@SCM協定12.7条は、調査の結果に利害を有する者のみを「利害関係を有する者」として扱うよう明示的に義務づけているわけではないし、SCM協定には利害関係を有する者として扱う際の利害の性質について定義した規定はない。また、SCM協定12.9条(i)及び(ii)に列挙された者が調査の結果に利害を有する者であるからと言って、それ以外の者を利害を有する者として扱うことが排除されているわけではない。また、SCM協定12.9条の “allowing”という文言からも、同条は利害関係者の認定に関する調査当局の権限を制限するというよりもむしろそうした権限を付与する趣旨であると解される。もちろん利害関係者の認定に関する調査当局の裁量は無制約のものではなく、利害関係を有する者と認定された者が負う負担を調査当局は考慮しなければならないが、本件において日本の利害関係を有する者の認定を妥当なものと認めたパネル認定に誤りはない (237-243)、Aファクツアベイラブルの利用に関する韓国の主張は、@で述べた点のみを根拠としていることから、ファクツアベイラブルに関する韓国の主張も認められない(244)

 

8.資金の直接的な移転(Direct Transfer of Funds)

 韓国は、2001年10月及び2002年12月の金融支援措置における資金の直接的な移転の認定はSCM協定1.1条(a)(1)(i)に違反していないとのパネル認定に対し、上訴していた。

 上級委員会は、次のように述べて、韓国の主張を退けた。@「資金」は現金のみならずその他の金融資産や金銭的権利(financial resources and other financial claims more generally)を含み、債務返済条件の緩和や債権から株式への転換を資金の直接的な移転とみなすことはできないとの韓国の解釈は狭きに失する(too literal and mechanistic)(250)、A2001年10月及び2002年12月の金融支援措置による債務返済条件の緩和や債権から株式への転換によって、ハイニックスの財政状況は改善したと考えられ、したがって資金の直接的な移転があったとみなすことができる(251-255)

 

9.損害の因果関係(Causation of Injury)

 韓国は、損害の因果関係についてSCM協定15.5条の違反を認めなかったパネル認定に対し、上訴していた。

 上級委員会は、次のように述べて、韓国の主張を退けた。@SCM協定15.5条やその他の周辺規定(SCM協定15.2条、15.4条、15.5条第3文)は、「補助金の交付を受けた産品の輸入」の影響を審査することによりそうした輸入と損害との因果関係を証明することを求めており、それと別に補助金そのものの影響を審査することは求めていない(261-268)、Aまた、SCM協定11.2条は、因果関係を証明するための十分な証拠として、補助金の交付を受けた産品の輸入の量の推移や輸入国内の市場価格に与える影響のほか、補助金の交付を受けた産品の輸入が国内産業にもたらす効果を挙げており、補助金そのものの影響には言及していない(269-271)、B韓国のその他の主張(SCM協定6.3条との関連、1994年のGATT6.6条(a)との関連、SCM協定の趣旨及び目的)も認められない(272-276)

 

10.業務上の秘密情報(Business Confidential Information)

 第三国参加をしていたECは、あまりに多くのBCI(業務上の秘密情報)がパネル報告から削除された結果、パネル報告は第三国にとって理解が困難なものになり、それにより第三国の権利が悪影響を受けたと訴えていた。

 上級委員会は、BCIを保護する必要を認めつつも、パネルはDSU12.7条や16条に定められた第三国やその他のWTO加盟国の権利に十分に留意し、理解可能な報告をまとめるよう努めなければならないと述べた。

 ただし、上級委員会は、本件の両当事国がBCIとした情報を公開することはなかった(279)

 

poki_a01上級委員会の結論

 以上より、上級委員会は次のように結論する。

(a) 2002年12月の金融支援措置の「委託若しくは指示」に関する日本の認定について

     (i) 日本が用いた証拠を総合して評価しなかったパネルは、DSU11条の審査基準を適切に適用していない。

     (ii) したがって、日本の認定がSCM協定1.1条(a)(1)(iv)に違反するとしたパネル認定を破棄する。

(b) 2002年12月の金融支援措置の利益に関する日本の認定がSCM協定1.1条(b)及び14条に違反しているとのパネル認定を支持する。

(c) 2001年10月及び2002年12月の金融支援措置の利益の計算がSCM協定1.1条(b)及び14条に違反しているとのパネルの結論を、パネルとは異なる理由で支持する。また、この点についてパネルはDSU11条に基づき問題の客観的な評価を行ったと認める。

(d) 日本が国内法令又は実施規則に規定されない利益の計算方法を用いたとのパネル認定を破棄する。

(e) 補助金の影響が失われた段階で日本が相殺関税を賦課したことはSCM協定19.4条に違反しているとのパネル認定を支持する。また、この点についてパネルはDSU11条に基づき問題の客観的な評価を行ったと認める。

(f) 2001年10月の金融支援措置の利益に関する日本の認定はSCM協定1.1条(b)及び14条に違反していないとのパネル認定を支持する。

(g) 利害関係を有する者の認定やファクツアベイラブルの利用に関して日本がSCM協定12.7条及び12.9条に違反していないとのパネル認定を支持する。

(h) 2001年10月及び2002年12月の金融支援措置による資金の直接的な移転に関する日本の認定はSCM協定1.1条(a)(1)(iv)に違反していないとのパネル認定を支持する。

(i) 補助金そのものの影響を評価しなかったことについて日本はSCM協定15.5条及び19.1条に違反していないとのパネル認定を支持する。

 

 上級委員会は、DSB(紛争解決機関)が日本に対し、SCM協定に違反すると認定された措置を協定上の義務に適合させるよう求めることを勧告した。

 

 

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